発売が決定しているフロントウイング新作『COCORO』。
プレイ前に紺野アスタ氏の作品へ触れておこうと思い、今回は『ATRI』をプレイした。
もちろん本作の存在自体は以前から知っており、評判の高さも耳にしていたため、プレイ前から期待値はかなり高かった。
そして結論から言えば、その期待にしっかり応えてくれる作品だったと思う。
ノベルゲームにあまり触れてこなかった人にとっては入門作として勧めやすく、普段からプレイしている人にも十分おすすめできる作品だと感じた。
評価
作品情報
作品紹介
謎の海面上昇によって大半の陸地が海へ沈んだ近未来。
主人公・斑鳩夏生は借金返済のため、海に沈んだ故郷で祖母の遺した“お宝”を探していた。
その最中、海底で発見したカプセルから少女型ヒューマノイド「アトリ」を引き揚げる。
“最後の命令”を果たそうとするアトリと、右足を失った夏生。二人は45日間のひと夏を共に過ごしていく。
良かった点
美しいCG
CGのクオリティがとにかく高い。
キャラクターCGはもちろん、背景美術まで非常に丁寧に作り込まれている。
正直、これほどのビジュアルをロープライス作品で味わえてしまって良いのかと思うほど高水準だった。
グラフィックレベルだけで考えるのであれば、全然フルプライスのものと同等かフルプライスの中でも高いものだと言えるかと思う。
話のテンポが良い
ロープライス作品ということもあり、プレイ時間は全体で10時間程度と比較的コンパクトにまとまっている。
その分、展開のテンポが非常に良く、中だるみを感じにくかった。
例えば学校に電気を灯すシーンも、必要以上に引き延ばされずスムーズに展開していく。
フルプライス作品であれば、あの場面だけで数時間使われてもおかしくないだろう。
個人的には、これくらいテンポ良く進む方がかなり好みだった。
サブキャラクターが魅力的
サブキャラクターたちは全員が個性的で、なおかつ人間味がある。
主人公を支える立場としてもしっかり機能しており、誰一人として欠けてはいけない存在だったと感じた。
また、“悪役”として描かれるキャラクターも分かりやすい立ち位置になっているため、短い登場時間ながら印象に残りやすい。
みんな水菜萌が好きなのだろう。
だが、私は竜司がかなり好きだ。
気になった点
水菜萌の人生
TRUEルートまでプレイすると、水菜萌の人生は本当にあれで良かったのだろうかと考えてしまう。
もちろん、彼女自身が選んだ人生ではある。
それでも、あの結末を見ていると「本当に幸せだったのか」と少し邪推してしまった。
本人たちが満足しているのなら、それで良いのかもしれないが。
ネタバレあり感想
全体的にテンポよく話が進むので、とても読みやすい作品だった。
物語もコンパクトにまとまっており、「面白くなるまでが長い」「序盤が苦痛」といった印象は、個人的にはほとんどなかった。
テーマ自体も分かりやすい。
主人公がアンドロイドであるアトリを拾い、一緒に過ごしていくという王道のボーイ・ミーツ・ガールである。
だからこそ、私は途中まで
「ああ、どうせ最後はアトリが心を手に入れるものの、廃棄される運命は変えられず、涙を流しながら溶鉱炉へ沈んでサムズアップするんだろうな」
なんて勝手に予想していた。
アトリは会話や仕草を見ていると、本当に心があるようにしか見えない。
人間らしさを少しずつ身につけていく姿を見ていたからこそ、主人公の告白に応えた場面も「ちゃんと好きになったから付き合うことを選んだ」のだと思っていた。
しかし、実際は違った。
アトリは「そうするのが最適だから」という理由で主人公と付き合うことを選んでいただけで、そこに恋愛感情はなかった。
つまり、まだ”心”は存在していなかったのである。
この展開には、素直にやられたと思った。
ところが、物語はさらにもう一段ひっくり返してくる。
「実はアトリには、すでに心が芽生えていた。」
「なんだって!?」
完全にしてやられた。
そして個人的に評価したいのは、最終的にアトリと別れるという結末自体は変えなかったことだ。
もしここで、ご都合主義的に「結局ずっと一緒に暮らせました」という終わり方だったら、ここまで高く評価することはなかったと思う。
最後の最後に再会するという締め方は、とても綺麗だった。
SFという世界観だからこそ成立する結末であり、それでいて作品全体の雰囲気を壊さない、アトリらしいエンディングだったと感じた。

まとめ
・不快なキャラクターがいない
・イラストがいい
・ノベルゲー初心者にもオススメ!
・個人的には水菜萌の人生が気になる
そんなゲームだった。


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