虚ノ少女 感想|『殻ノ少女』から続く偏執と因習の物語

エロゲ感想

前回の”殻ノ少女”の続編にあたる、Innocent Greyの『虚ノ少女 《 FULL VOICE HD SIZE EDITION 》』をプレイしたので、感想を書いていく。

殻ノ少女 HD版 感想 | 偏執の始まり
前回のカルタグラに続き、Innocent Greyの『殻ノ少女 《 FULL VOICE HD SIZE EDITION...

終わり方が終わり方だったので、”天ノ少女”をそのままプレイしたため、そっちの気持ちに引っ張られないよう、純粋に”虚ノ少女”が終わった時点での気持ちで感想を書こうと思う。

終われば、良かったなと思ったがプレイ中の感想は3作品の中で一番退屈だなと感じるものがあった。

評価

総合評価:80点

虚ノ単品で見ても話は面白い
個人的に殻ノほうが好きなためそこで点数差をつけている

シナリオ

88/100

キャラクター

85/100

音楽

90/100

文章

80/100

万人受け

60/100

作品情報

虚ノ少女
カルタグラ パケ
ジャンル
サイコミステリィAVG
ブランド
価格
¥5,029 (税込)
原画
杉菜水姫
おすすめ度
プレイ時間
20時間程度

作品紹介

昭和初期、富山の山奥に存在する閉鎖的な人形集落。
「ヒンナサマ」と呼ばれる神を信仰するその村で、少年・理人は少女・砂月と出会い、穏やかな日々を過ごしていた。

しかし祭の翌朝、住民が惨殺死体となって発見されたことをきっかけに、集落では“ヒンナサマの祟り”が囁かれ始める。
さらに理人の想い人である砂月までもが無残な姿で発見され、事件は戦争の混乱によって真相不明のまま闇へ葬られてしまった。

そして時は流れ昭和32年。
行方不明となった朽木冬子を追い続ける探偵・時坂玲人は、過去の事件と酷似した猟奇殺人事件の調査を開始する。

捜査を進める中で明らかになっていくのは、古い因習に支配された村の狂気と、そこに翻弄された人々の悲劇だった――。

この“過去に村で起きた事件”が、時を経て『殻ノ少女』の主人公である玲人の人間関係にまで影響を及ぼしていく――
そうした、過去と現在が繋がっていく構成には続編ならではの面白さがあった。

また、『カルタグラ』に登場した千里教が本作でも関わっていたり、前作のキャラクターたちも引き続き物語に深く関与しているなど、前作以上に『カルタグラ』との繋がりが強い作品だと感じた。
そのため、必須というわけではないものの、本作をより楽しむためにも『カルタグラ』は事前にプレイしておくことをおすすめしたい。

良かった点

虚ノ少女単品でも面白い

『殻ノ少女』をプレイしているからこそ感じられる面白さは多い。
しかし、事件そのものに関しては『虚ノ少女』単体で見ても十分に完成度が高く、純粋に面白い作品だと感じた。

続編作品にありがちな、“前作ありき”で引っ張られすぎている印象はそこまで強くなく、本作には本作ならではの独立した魅力があったように思う。

……もっとも、「偏執」というテーマを考えると、前作との繋がりが色濃いのも当然ではあるのだが。

広げた風呂敷をしっかり畳み切っている

戦前と戦後、二つの時代を跨いで発生する「ヒンナサマの祟り」。
本作は時間軸を行き来しながら物語が展開されるうえ、『殻ノ少女』以上に登場人物も多い。
それにもかかわらず、最終的にはしっかりと物語をまとめ切っていた点は素直に凄いと感じた。
複雑に絡み合った事件や人間関係が最後には一本に繋がっていく構成は見事だったと思う。

また、事件の動機についても、決して共感できるものではないにせよ、「なぜそうなったのか」は理解できるよう描かれていたため、その点も含めて非常によく纏められていた印象がある。

……まぁ、理解はできても“理解したくはない”のだが。

『天ノ少女』へと続く大事な作品

『殻ノ少女』シリーズは全三部作で構成されており、本作『虚ノ少女』はその第二作にあたる。

シリーズ中編という立ち位置ではあるものの、単なる繋ぎの作品ではなく、『天ノ少女』へ向けて物語を大きく動かす重要な一作だったと感じた。
シナリオ面に関しても、最終作へ繋げる作品として非常に完成度が高い。

True Endは決して救いのある終わり方とは言えず、かなり心に来るものがある。
それでも、この結末を見せられてしまえば、『天ノ少女』をプレイせずにはいられないだろう。

気になった点

朽木冬子の“不在”

今作では、前作で姿を消した冬子を探すこと自体が物語の目的の一つとなっている。
そのため、冬子本人は長い間不在のまま物語が進行していく。
しかし、その“不在”が逆に強く印象に残る作品でもあった。
物語としては十分に面白いはずなのに、どこか満たされない感覚が常に付きまとっていたように思う。

それは恐らく、私自身が想像以上に朽木冬子という存在に惹かれていたからなのだろう。
……朽木冬子、恐ろしい女である。

雪子の印象がやや薄い

今作のパッケージヒロインである雪子は、物語の根幹に深く関わる重要な人物として描かれている。
しかし、その立ち位置の大きさに対して、個人的にはどこか物足りなさを感じてしまった。

なぜそう感じるのか、自分でも上手く言語化できない部分はある。
雪子自身の過去や想いについて描写された後でも、不思議と“腑に落ちきらない感覚”が残っていた。

決して魅力がないわけではない。
ただ、他のキャラクターたちの存在感が強烈だったこともあり、相対的に印象が薄く感じられてしまったのかもしれない。

感想

本作は登場人物も多く、さらに過去と現在を行き来しながら物語が進行していく構成となっている。
そのため、一歩間違えれば話が散らかってしまいそうな難しい作品だったように思う。
しかし、それでも最後まで面白く読ませ切ったのは、やはりライターの力量による部分が大きいのだろう。

また、『虚ノ少女』単体として見ても十分に完成度の高い作品でありながら、『殻ノ少女』との繋がりもしっかり感じられる構成になっていた点については、素直に脱帽した。

真崎 智之

第2の主人公とも言える真崎についてだが、やはり玲人と比較すると物足りなさを感じてしまった。
もっとも、探偵である玲人と、その助手的立ち位置である真崎という関係性を考えれば、それもある意味では自然な描かれ方なのだろう。
実際、真崎自身も未熟さを抱えたキャラクターとして描かれているため、その点については作品として間違っているとは思わない。

ただ、それでも玲人の存在感が強すぎるせいか、どうしても“型落ち感”のようなものは否めなかった。

※ネタバレあり(クリックで表示)

真崎=理人という繋がりにすぐ気づけなかった自分が少し悔しい。
というのも、過去編では理人以上に尚織の存在感が強く、個人的には彼の方が主人公らしい人物に見えていた。
そのせいもあって、最初は「真崎=尚織なのではないか」と予想していたのである。

ミステリー作品はこれくらい察しが悪い方が素直に楽しめるのかもしれない。
そう思うことにして、自分を納得させている。

 

理子について

※ネタバレあり(クリックで表示)

また、砂月が実は二人存在していたことや、理子=冬見であることも全く見抜けなかった。
私は普通に「砂月は二重人格なのだろう」と考えていたため、完全にライターの狙い通りに誘導されていたことになる。

こうして振り返ると、自分の考察の浅さを痛感させられる。

パッケージヒロインこそ雪子ではあるが、本作の物語の主軸にいるのは理子だったのではないかと私は感じた。
生まれながらに皐月の“影武者”として育てられた理子の人生は、まさしく『虚ノ少女』というタイトルそのものだったように思う。

そんな“虚ろ”だった彼女の心を埋めた存在が理人であり、彼に惹かれ、恋をしてしまったことこそが、すべての悲劇の始まりだったのだろう。
そう考えると、どうしても居た堪れない気持ちにさせられる。

「教えてください時坂さん……好きになった人と一緒にいたいという願うのは罪なのですか……?」

アマカノ2CG

これが偽らざる、理子の気持ちだろう。

虚ろだった彼女が、自身の子を手にかけそうになったことをきっかけに人格矯正を受け、“茅原冬見”として新たな人生を歩み始めたという流れは非常に印象的だった。

そして、冬子を実の娘のように育てていた姿を見ると、かつての“虚ろな少女”とは違う人生を歩めていたのだと感じられ、どこか救われた気持ちになる。

また、冬子だけでなく、理人の子である未散も共に育てていこうと前を向く彼女の姿は、本作の中でも特に応援したくなるものだった。

……しかし、あれほどおしとやかだった理子を、“冬見”として人格矯正した六識という男は、本当にどこまでも物語に絡んでくる。
恐ろしい男である。

今作の事件について

※ネタバレあり(クリックで表示)

結局のところ、本作の悲劇の根源にあるのは、花恋が兄である理人へ抱いていた妄執なのだろう。
そのため、“狂気性”という観点で見ると、個人的には前作『殻ノ少女』の方が強烈だったように感じた。

また、花恋自身への掘り下げがそこまで多くなかったことも、その印象に繋がっているのかもしれない。
プレイ中の私は、「かなり重度のブラコンだな」程度の認識で見ていた部分が大きかった。
歪ではあれど、一つの“愛の形”だったのだとは思う。

しかし、すべてを辿っていけば、本作で描かれる“近親交配”という因習の異常性こそが、悲劇の根本原因なのだろう。
花恋もまた、雛神家に根付いた歪んだ因習の被害者だったと言っていい。
それほどまでに、あの村の価値観は外の常識から大きく逸脱していた。

また、近親愛に関する話で言えば、千鶴については今作でさらに苦手意識が強くなったキャラクターでもある。
兄に想いを抱いていること自体を否定するつもりはない。
その執着によって兄を傷つけ、さらに兄だけを見続けた結果、冬子もまた心のどこかで寂しさを抱えていたのではないかと思うと、どうしても複雑な感情になってしまう。
しかし、この執着心こそシリーズにおける”偏執”なのだろう。

朽木冬子の存在と時逆玲人の偏執

※ネタバレあり(クリックで表示)

冬子が、前作の時点ですでに玲人の子を身籠っていたという事実は全く予想できておらず、純粋に衝撃を受けた。
人にあまり懐かない赤ん坊が、玲人や紫には不自然なほど懐いていたことも、「そういうことだったのか……」と繋がった瞬間の驚きは言葉にできない。

また、本作冒頭のプロローグが冬子自身の想いだったのだと気づいた時は、やるせない気持ちにさせられた。
それと同時に、冬子にとって“玲人との子を宿した”という事実そのものは、きっと心から幸せだったのだろうと思うと、どうにも胸に来るものがある。

そして、全てが終わった後のタイトル画面でのメッセージ

久しぶりだね。
ずっとあなたに逢いたかった──
また逢えなくなるのは寂しいけど
ずっとそばにいるから──
もう、私は寂しくないから…

もう言葉にできない。

結果的に、冬子は玲人との子を産み、そのまま亡くなってしまう。
そして玲人自身が彼女の骨を見つけ、謝罪と共に慟哭するあのシーンには、こちらまで胸を締め付けられた。

アマカノ2CG

正直なところ、私は最後まで「冬子はまだ生きているのではないか」「この骨にも何か別の意味があるのではないか」と信じたかった。

しかし、玲人自身が“自分が見間違えるはずがない”と言い切るのである。
だからこそ、こちらも冬子の死を受け入れざるを得なかった。

それでも、その事実を受け止めるまでにはかなり時間がかかったように思う。

物語を読み終えた後、こちらまで虚ろになってしまった。
――『虚ノ少女』、まさかプレイヤーの心まで“虚ろ”にさせてくるとは思わなかった。

この辛い終わり方がTrueEndでParanoiaEndまで用意しているのは意地が悪いとしか言えない。
でもこういうの嫌いじゃないわ!
アマカノ2CG

上月由良の偉大さ

※ネタバレあり(クリックで表示)

カルタグラの由良のような妄執と狂気に至る愛を持つ花恋や
他のものを殺めて取り入れたいといっている冬子が出てくるが
それらを一人で持ち合わせている、由良の狂気性を改めて認識させられた。

花恋も冬子もそこまで個人的に刺さるキャラクターではないが、由良は刺さった。
ここの違いはなんだろうな…と思う。

やはり、由良くらい狂っていなければな。

まとめ

終わってみれば、「良いゲームだったな」というのが素直な感想である。

プレイ中は、『殻ノ少女』ほど事件そのものの狂気性は薄いように感じていたし、過去と現代を行き来する構成も、自分には少し合わないのか、どこか物足りなさを覚えていた部分もあった。
しかし、物語を最後まで読み終えると、それらも含めて『虚ノ少女』という作品だったのだと感じられ、結果として非常に満足度の高い作品だったと思う。

また、本作のTrue Endへ到達するには二周目のプレイが必須となっている。
二周目だからこそ見えてくるキャラクターたちの心理描写や、本当の意味で理解できる台詞も多く、この構成はこれはこれで良いものだと感じた。

“偏執”から人々を解放していく立場である玲人自身が、誰よりも強い偏執を抱え続けている――。
そうした歪さもまた、このシリーズらしさなのだろう。
果たして、玲人がその偏執から解放される日は来るのか。
そして、もし解放されるのだとしたら、それはどのような形なのか。

今はただ、『天ノ少女』への期待が高まるばかりである。

コメント

タイトルとURLをコピーしました