前回のカルタグラに続き、Innocent Greyの『殻ノ少女 《 FULL VOICE HD SIZE EDITION 》』をプレイしたので、感想を書いていく。

カルタグラをプレイし、Innocent Greyの世界観に強く惹き込まれた結果、本作もプレイせずにはいられなかった。
それほどまでに、このシリーズにハマっていると実感している。
結論から言えば、本作も非常に面白い作品であり、思わず一気にプレイしてしまった。
この勢いのまま、『天ノ少女』まで駆け抜けることを心に誓った。
📖目次
評価
作品情報
作品紹介
昭和三十一年、復興が進む東京。
私立探偵・時坂玲人は、「自分自身を探してほしい」と語る謎の少女・朽木冬子と出会う。
同時期、少女を狙った猟奇連続殺人事件が発生。
さらに女学院での失踪事件も重なり、時坂は三つの依頼を同時に追うことになる。
捜査のため学園へ潜入した彼を待っていたのは、再び現れた冬子の姿だった――。やがて事件は複雑に絡み合い、過去の未解決事件へと繋がっていく。
連続する惨劇の果てに辿り着く真実とは――。
『カルタグラ』が昭和二十六年二月を舞台としているのに対し、『殻ノ少女』は昭和三十一年三月から四月にかけての物語であり、約5年後の世界が描かれている。
本作には『カルタグラ』の主人公やヒロインも登場するが、未プレイでも十分に楽しめる作品ではある。
しかし、前作をプレイしていることで理解が深まり、より一層楽しめる構成になっているため、事前のプレイを推奨したい。
まずは『カルタグラ』をプレイし、作風が合うと感じたのであれば、そのまま『殻ノ少女』へと進むのが最もおすすめだろう。
良かった点
美しいCGと世界観にあった音楽
『カルタグラ』と同様の感想にはなるが、まず挙げたいのは美しいCGと音楽の良さである。
杉菜水姫氏が描く、繊細な線で表現されたどこか儚げなイラストは、いわゆる萌え絵とは一線を画しており、強く惹き込まれる魅力を持っている。
私自身、もともと細い線の絵が好みということもあり、今回もビジュアル面に関しては文句の付け所がなかった。
音楽については、『カルタグラ』以上に推理要素が強まっていることもあり、緊迫した場面を引き立てるBGMが非常に印象的だった。
シーンごとに的確に配置された楽曲は、物語への没入感を一層高めてくれる要素となっている。
時坂玲人という男
今作の主人公である時坂玲人は、大人としての魅力が詰まった非常に格好良いキャラクターであった。
前作『カルタグラ』の主人公・秋二については、プレイ中にやや引っかかる部分を感じることもあったが、本作ではそうしたストレスを感じる場面はほとんどなかった。
時坂さんは、外見や声、色気、そして探偵としての有能さといった様々な要素を兼ね備えており、総合的に見て非常に完成度の高い人物として描かれている。
極端な言い方をすれば、本作は冬子と時坂さん、この二人の魅力によって成立していると言っても過言ではないだろう。
それほどまでに印象に残るキャラクターであった。
また、学生たちから慕われる理由にも納得感があり、その点も好印象だった。
一方で、誰に対しても完全に心を開いているわけではないという距離感の描き方も魅力の一つである。
時坂さんは亡き妻、そして冬子に対して“パラノイアを抱えているからね。
朽木冬子の魅力
今作のメインヒロインである朽木冬子の存在も、本作を楽しめた大きな要因の一つである。
一見すると年齢以上に大人びた印象を受ける人物だが、物語を進めていくうちに、決してそうした側面だけではないことが分かってくる。
自分が何者なのかを知りたいと願う、等身大の少女らしさを持っている点が非常に魅力的だった。
無邪気で子供らしい一面を見せることもあれば、どこか掴みどころがなく、ふとした瞬間に消えてしまいそうな儚さも併せ持っている。
そうした相反する要素が同居しているからこそ、強く惹きつけられるキャラクターだと感じた。
後は、あじ秋刀魚さんの声がいいね。初めてまともに聞いた気がするけどこれは脳に響きますわ。
あじ秋刀魚さんって最近の声優だなあ~って思ってたらデビュー作である今作が2008年でひっくり返った。
サイコミステリィとしての面白さ
『カルタグラ』と同様に、本作もミステリー要素の強い作品であった。
それに伴い、全体の雰囲気もどこか灰色がかった重苦しさを帯びており、世界観の作り込みという点では流石の一言に尽きる。
本作では大きく分けて三つの事件が描かれるが、いずれも猟奇性の強い内容となっており、その狂気は前作以上に際立っている印象を受けた。
これはライターの表現力はもちろんのこと、杉菜水姫氏によるスチルが視覚的にも強烈な印象を与えていることが大きいだろう。
物語序盤では見知らぬ少女が被害者として描かれるが、やがて「次に狙われるのは身近な人物なのではないか」という不安と緊張感が常に付きまとう展開となる。
そうした感覚を強く味わえたのは、『カルタグラ』で築かれた土台があってこそだと感じた。
気になった点
システム面の古さ
個人的に最も気になった点は、Ctrlキーによるスキップ機能が使用できないことである。
HD版とはいえベースは2008年の作品であるため、ある程度は仕方がない部分だと理解しているが、それでも不便さを感じたのは事実だ。
前作『カルタグラ』ではCtrlスキップが可能であり、クリック操作を行ってもオートプレイが途切れないなど、快適にプレイできるシステムが整っていた。
それと比較すると、本作はどうしてもシステム面の古さが目立ってしまう印象を受ける。
攻略難易度の高さ
本作には「推理パート」というゲーム性が用意されており、その点は新鮮で評価できる要素だと感じた。
一方で、全体的に攻略難易度が高く、初見ではスムーズに進めるのが難しい点が気になった。
実際、攻略情報を見ずに進めた場合、序盤からBAD ENDに直行してしまう可能性も高いと感じた。
私自身、普段は攻略サイトを参照しながらプレイすることが多いが、今回は自力で進めてみようと試みた結果、数回BAD ENDに到達してしまい、最終的には断念する形となった。
ルート分岐には好感度管理や必須選択肢がしっかりと組み込まれており、ゲーム性としては評価できる作りになっている。
しかしその反面、選択肢の多さや分岐の複雑さが難易度を押し上げており、人によってはやや取っつきにくさを感じる部分かもしれない。
ネタバレ感想
※ネタバレあり(クリックで表示)
前作以上に、犯人の心情が理解できないというのが率直な感想である。
しかしそれは裏を返せば、本作が猟奇性を非常に巧みに描けている証でもあるだろう。
物語が進むにつれて、犯人の狂気や偏執が徐々に強まっていく構成も印象的だった。
日下や心爾も十分に猟奇的であり、強い執着を抱えた人物として描かれているが、それ以上に際立っているのが六識命の存在である。
明らかに常軌を逸した人物であり、決して理解できる存在ではない。
それでもなお、その狂気さに惹きつけられる魅力があると感じた。
理解できないはずの狂気が、ある種の美しさや“芸術性”すら感じさせる――
そう思わせる点こそが、本作の強みなのかもしれない。
今作の犯人については、動機や具体的に誰が犯人になるのかまでは予想できなかったものの、「これは怪しいだろう」と感じていた3人が結果的に犯人だったため、少し自信を持てたポイントでもあった。
本シリーズを通して、なんとなく犯人の傾向も掴めてきたように思う。
顔が良く、なおかつボイス付きのキャラクターは大体怪しい。そんな印象すらある。
なお、六識が関わっていること自体は正直見抜けなかったが、それでも「こいつは絶対に怪しい」と感じていたキャラクターではあった。
本作の直接的な犯人ではないにしろ、間宮心像も狂っていた。
元はと言えば、間宮心像が狂っていたからこそ心爾も狂ってしまっているので諸悪の根源と言っても過言ではないが…
モデルである妻を犠牲にしてまで作品を完成させるという禁忌を犯しているにもかかわらず、芸術家としては究極の一作を生み出したと評価されている点は非常に印象的であった。
倫理的には決して許される行為ではないが、それでもなお評価されてしまう芸術というものの在り方は、改めて難しいものだと感じさせられる。
(実際に殻ノ少女を破壊する時に教頭も惜しそうにしていましたしね)
六識命について
※ネタバレあり(クリックで表示)
彼の行動は到底理解できるものではないが、個人的には、自分自身の狂気を自覚している点にどこか惹かれるものがあった。
一般的に私がイメージする“サイコパス”とは、「自分は正常で、周囲の方がおかしい」と認識している存在である。
しかし六識はそれとは異なり、自らの異常性をある程度客観的に捉えているように感じられる。
その自己認識こそが、彼の悪役としての魅力を一層引き立てているのではないだろうか。
実際、妹との関係や、時坂さんの妻に対する行為など、常軌を逸した言動が目立つ人物であることは間違いない。
しかし、彼と“普通に”接することができたステラの姉の存在は、ある意味で際立っており、その偉大さを改めて実感させられる。

この選択肢を見た時に、迷わず引き金を引いた。
時坂さんの立場になると引き金を引かないという選択肢は選べなかった。
朽木冬子
※ネタバレあり(クリックで表示)
冬子については、率直に言って「ただただ可哀想だった」というのが正直な感想である。
序盤は年齢の割に大人びた印象を受けたが、物語を進めるにつれて、自分の出自を知りたいと願う、年相応の少女であることが強く伝わってきた。
メインヒロインとしての存在感はしっかりと描かれており、印象に残る場面も多かった。
キャラクターとしての魅力は十分に感じられたと言える。
結果として、事件に巻き込まれる形で翻弄され続ける存在であり、最終的な展開も含めて救われたとは言い難い。
だからこそ、続編である『虚ノ少女』の行く末が気になるところでもある。
また、「瑠璃の鳥」エンドは、殻ノ少女であった冬子が“殻を破る”という意味では非常に美しく描かれている。しかし、それを単純にハッピーエンドと呼べるかと言われると難しい部分もあり、だからこそ今後の展開に期待したくなる終わり方だった。
早く冬子とあじ秋刀魚に、私はもう一度会いたいよ。
まとめ
・”狂気”がテーマなため、猟奇的なシーンが多め
・システム面がちょっと難しいと感じる箇所あり
・主人公がカッコイイ
・雰囲気づくりは流石のイノグレ
・既に続編が完結しているため触りやすい
序盤は、少し退屈…と言えば退屈なのだが、事件が始まってからはもう続きが気になって仕方がない。
ミステリー作品としてはやや物足りないという意見も見かけたが、私はミステリーに詳しいわけではないため、その点については評価しづらい部分がある。
特に「犯人が分かりやすい」という点が指摘されているようだが、確かに言われてみれば納得できる部分ではある。
ただ、個人的には犯人そのものよりも、動機や内面、何を思って行動していたのかといった点に重きを置いてプレイしていたため、大きく気になることはなかった。
むしろ、そうした心理面の描写や物語の展開は十分に楽しめたため、全体として特に不満は感じなかった。


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