天ノ少女 感想|長い旅路の終着点として美しい作品

エロゲ感想

殻ノ少女』から始まり、『虚ノ少女』へと続いたシリーズ――。
その最終作である『天ノ少女』を読了したため、感想を残していく。

今作は序盤から大きく物語が動き出すこともあり、最初から強く惹き込まれた。
途中で中だるみを感じることもなく、最後まで一気に読み切ることができた作品である。

どれくらい夢中になっていたかと言えば、プレイ開始からわずか3日ほどで読了してしまったほどだ。
それくらい、このシリーズの世界にのめり込んでいた。

今回の記事は今までの感想記事とは違い、各キャラクターにフォーカスを当てて感想を書きたいと思う。
そのため、ネタバレ全開であることをご注意いただきたい。

評価

総合評価
85

シリーズ最終作としては文句なし。
全体的な完成度は高いと感じている。

シナリオ
90 / 100
キャラクター
90 / 100
音楽
90 / 100
文章
80 / 100
万人受け
70 / 100

作品情報

天ノ少女
カルタグラ パケ
ジャンル
サイコミステリィAVG
ブランド
価格
¥8,800 (税込)
原画
杉菜水姫
おすすめ度
プレイ時間
15時間程度

感想

True Endを迎えた時、最初に浮かんだ感想は「あぁ……ようやく終わったんだな」というものだった。
この結末については賛否が分かれる部分もあるのだろうと思う。
しかし、個人的には特に不満もなく、この終わり方だからこそ『殻ノ少女』シリーズらしいとも感じている。

だからこそ、結末そのものを引きずるというよりは、“本当に終わってしまったんだな”という寂しさの方が強かった。

エロスケの90点はちょっと高さを感じざるを得ないのだが、時代が違うのでそこは御愛嬌
私は85点をつけさせていただいているが、それくらいには面白いと思えた作品だった。
期待値が高かっただけ、どんな終わり方をするんだという楽しみもあったが3周目の終わりを迎え、あじ秋刀魚さんの声を聞いた瞬間に展開は予想できたがその時点でうるっと来た。

時坂玲人

本作の主人公である時坂玲人は、『殻ノ少女』から続いて冬子への“偏執”を抱え続けている人物であり、『虚ノ少女』では二度目となる最愛の人との別れを経験した、非常に悲哀の強いキャラクターでもある。
だからこそ、本当に「幸せになってほしい」と心から思えた主人公だった。
そして、この主人公がいたからこそ、『殻ノ少女』シリーズはここまで魅力的な作品になっていたのだとも感じている。

作中では様々な女性と関係を持つ人物ではあるのだが、それにも不思議と嫌悪感は抱かなかった。ステラと関係を持ったことは意外だが。

冬子との再会

最後の色羽とのシーンについてだが、私はあれを“冬子との再会”でもあったのだと捉えている。
もちろん、あの時点の玲人は、冬子に対する“偏執”そのものからは解放されていたのだと思う。
しかし、それでも「もう一度会いたい」という想いまで完全になくなっていたかと言われれば、決してそうではないだろう。
だからこそ、色羽を見た瞬間のあの驚いた表情と涙には、玲人の中に残り続けていた冬子への感情が滲み出ていたように感じた。

無論、単純に“色羽が冬子に似ていた”という演出として受け取ることもできる。
だが、できることなら私は、玲人がほんの一瞬だけでも冬子と再会できたのだと思いたい。
そして恐らく、それは私自身がもう一度冬子に会いたかったからなのだろう。

色羽との再会

前作で攫われてしまった色羽との再会。
玲人は別件の事件を通して、ようやく彼女と再び出会うことになる。

作中では、色羽が“冬子との子”であるという確定的な描写こそない。それでも、玲人自身は確信していた。

だからこそ、育ての親と幸せそうに過ごしている色羽の姿を見て、「これでいいんだ」と自分に言い聞かせるように身を引く玲人の姿は、見ていて本当に辛かった。

亡き冬子との子であり、同時に自分自身の娘でもある。
本来なら、その成長を誰より近くで見守っていたかったはずなのだ。

それでも、自ら距離を置こうとする玲人を見ていると、どうしても「玲人にも救いがあってほしい」と思わずにはいられなかった。

アマカノ2CG

時坂紫

何気に初めて触れる話題ではある。
声優がしまりのさんのため、実は結構好きなキャラである。
ヒロインという立ち位置ではないため、今まで特に触れては居ないが最後までいいキャラクターだった。

今作のMVPといえばやはり彼女だろう。
彼女のお陰で事件の真相に辿り着くことができたので、流石主人公の妹といったところだろうか。

よく周りを観察できており、兄の人間関係などもある程度は理解していながらも口は出さないが心配はするという非の打ち所がない妹キャラであった。

「殻ノ少女」で親友を喪い、「虚ノ少女」で親友を失い、救いはないのかと思っていた所で、Grand Endでの再会。
最後の最後で報われた瞬間だなと感じた。
アマカノ2CG

八木沼了一

正直、ここまで好きになるとは思っていなかったキャラクター筆頭である。
『カルタグラ』では正直かなり鬱陶しい印象が強く、『殻ノ少女』でも「なんだか態度が大きくなったな……」程度の感想しか抱いていなかった。

しかし、『虚ノ少女』以降は真崎よりも“バディ”的な立ち位置となり、面倒見の良さや、どこか憎めない性格もあって、一気に好きなキャラクターへと変わっていったように思う。
だからこそ、一周目で六識に利用される形で命を落とした時は、本気で落ち込んでしまった。まさか自分がここまで感情移入しているとは思っていなかったため、それだけ魅力的なキャラクターになっていたのだろう。

二周目以降では命を落とすことなく、六識に一泡吹かせることにも成功したため、その点は本当に良かったと思う。
……とはいえ、姉とは結局どう足掻いても再会できない。
そう考えると、最後までどこか報われきらない、哀しいキャラクターでもあった。

六識の明らかに罠とも思える誘いに、自分の出世コースを捨ててまで姉とまた再会したいと思う”偏執”があったからこそ、六識の罠に乗ってしまったのは人間らしさがあってどこか憎めない。

真崎にも色々といいつつも、Grand Endではスーツを持ってきてあげたりといいヤツなんだよなコイツ。

魚住&杏子

『虚ノ少女』では不在だった魚住が、ようやく本作で再び登場した。
やはり、玲人の相棒と言えば彼しかいない。
また、杏子についても、『虚ノ少女』までは玲人と互いの傷を舐め合うような関係性が続いていた。それはそれで嫌いではなかったのだが、最終的にその関係へ一区切りがついたのは良かったと思う。
というのも、玲人の心は最後まで由紀子と冬子、二人の存在に強く縛られていたからだ。

だからこそ、杏子が魚住と結ばれた結末には納得感があった。
何より、玲人との関係を理解したうえで、それでも杏子を想い続けていた魚住の一途さが本当に格好良い。

作中では、「杏子は最終的に玲人と結ばれるのではないか」と感じていたキャラクターも多かったように思う。
しかし、杏子と玲人の関係は、どこか“恋愛”とは少し異なるものにも見えていたため、この結末は非常にしっくり来た。

もちろん、そこに“愛”が全く存在しなかったわけではないのだろう。
それでも、玲人を長い間支え続けてくれた存在の一人が杏子だったことは間違いない。

アマカノ2CG

真崎智之

『虚ノ少女』から見れば、成長した“もう一人の主人公”とも言える存在である。
推理力についても以前より明らかに成長しており、自分で状況を整理しながら動ける場面も増えていた。
その一方で、近しい人物が亡くなっても比較的冷静でいられるあたりには、どこか常人離れした危うさも感じる。
ある意味、少し狂っている人物なのかもしれない。

また、紫との関係については、最後まで“くっつきそうでくっつかない”絶妙な距離感のまま終わった印象だった。
もっとも、冬見に「朴念仁」と言われるくらいなので、あの鈍さでは仕方がない気もする。

個人的には、尚織に「時効であるお前と自分を同じ立場のように語るな」と言わんばかりに論破されていた場面は少し笑ってしまった。
……いや、本当にその通りなのである。

しかし、その一方で、最後まで未散が自分の子であることを知らないままだったのは、やはり少し可哀想でもあった。
子どもに“親を知る権利”があるように、親にもまた“子を知る権利”があると私は思う。

もし真実を知った時、真崎と冬見の関係がどう変わっていくのか――そこは少し気になるところでもある。

朽木文哉

今作で、個人的に最も評価が変わったキャラクターかもしれない。
『虚ノ少女』の時点では、「妹のせいで振り回された可哀想な人物」という印象が強く、どこか同情していた部分もあった。
だからこそ、本作で明かされた彼の本質にはかなり衝撃を受けた。

冬子に対して強い性的執着――いわば“偏執”を抱えており、その異常性は色羽に冬子を重ねて見ていたことや、『殻ノ少女』を想起させる“天罰”の絵を盗み出していた行動からもよく分かる。

正直、「ここまで歪んでいたのか……」という気持ちにならざるを得なかった。

冬子のことを想い、自慰行為をし始めた時はドン引きした。流石に。

朽木千鶴

正直に言えば、シリーズを通して最後まで好きになることができなかったキャラクターである。
彼女は兄に対して強い“偏執”を抱えており、その歪んだ愛情は、冬子へのネグレクトや、最終的には娘である色羽を手にかけてしまうほど異常なものとして描かれていた。

もちろん、彼女自身もまた様々な苦しみや歪みを抱えた人物ではあるのだろう。
しかし、それらを踏まえたうえでも、個人的にはどうしても受け入れきれなかった。
最後の最後まで、好きにはなれなかったキャラクターである。

六識命

やはり、このシリーズを代表する悪役と言えば六識命だろう。

『虚ノ少女』も十分に面白い作品だったが、『天ノ少女』をここまで印象深い作品にした要因として、彼の存在は外せない。
数多くの人物の人生を歪め、多くの悲劇を生み出した張本人であり、彼の行いは決して許されるものではない。
しかしその一方で、「もしどこかで道を違えなければ、別の人生もあったのではないか」と考えてしまう部分もある。

それくらい、単なる“狂人”だけでは片付けられない魅力を持った悪役だった。

前園静

今作の“切り札”的存在であり、ある意味では最終兵器とも言えるキャラクターだった。
ただ、これまでの犯人たちのように強烈な狂気性を抱えているわけでもなく、自身が深い悲劇を背負っているわけでもない。
むしろ、彼女の存在によって妹が命を絶つ結果になってしまったこともあり、個人的には最後までどこか腑に落ちきらないキャラクターでもあった。

もちろん、彼女がいたからこそ六識を出し抜くことができたのも事実であり、その意味では間違いなくMVP級の活躍を見せた人物ではある。
しかし、それでもなお「好きか」と聞かれると、少し複雑な感情が残るキャラクターだったように思う。

窪井千絵

うーん…いる?
静に対しての“偏執”を抱いており、静が亡くなったと想い敵討ちという形で犯罪を犯すのだが、なんだか今までの作品と比べると少しね。

今作は全体的に”ミステリー”より“偏執”に重きを置いているように思えるのでこれはこれで…

黒矢尚織

前作で色羽を連れ去った男であり、玲人が今作で追い続けていた人物。
しかし正直に言えば、最後の最後まで「何をしたかった人物なのか」が掴みきれなかった。

どんな“偏執”を抱えているのかと思えば、その本質は「自分の小説を読んでほしい」という極めて歪んだ承認欲求のようなものであり、そのためだけに葛城シンを殺害しているあたり、確かに狂っている人物ではある。

だが、逆に言えば、それ以外の部分があまりにも空虚にも感じられた。
前作から散々引っ張られてきた存在だっただけに、「結局この人物は何だったのか」という感覚が最後まで拭えなかったのも事実である。

正直なところ、ここまで引っ張るのであれば、いっそ葛城シンそのものを追い続ける構成でも良かったのではないか――そんなことすら少し思ってしまった。
それだけに、「引っ張った割には……」というのが率直な感想である。

佐枝色羽

今作の存在理由かつ、冬子の残した大事な娘。
色羽=色のついた羽=瑠璃色の鳥っていう名付け方がセンスを感じてとても良い。

物心ついた頃には孤児として、佐枝の家で育てられたので自分の出自が気になるという冬子と同じような想いを抱えており、冬子の子もまた同じ道を辿るのかなと想わせるような展開。

色羽が直感的に玲人を自身に関係のある人物だと理解しているのがまた良いですね。

玲人がいるから、今度は冬子と同じような展開にもならないし、玲人も文哉のような想いを抱いているわけではないから大きく問題にはならないとはおもうが、素直に自分の子供だと言うとも思えないが、二人にはただ幸せになってほしいなと心から願う。

最後の最後であじ秋刀魚さんの声が聞こえた瞬間に終わり方が読めたがそれでも1つ1つ丁寧に噛みしめるようにクリックしていました。

とにかく文哉に渡らなければそれで良い…

アマカノ2CG

朽木冬子

登場回数自体は決して多いわけではない。
それでも、プレイヤーを含め、数多くの人間を振り回し、物語の中心に在り続けた――まさしくシリーズ全体を象徴するヒロインだった。

二周目で遺影を見るシーンは、本当に辛かった。
あぁ……冬子は本当にいなくなってしまったんだ」と、そこで改めて実感させられたように思う。

そして、彼女という存在がいたからこそ、『殻ノ少女』シリーズは最後の最後まで強く惹き込まれる作品になっていたのだろう。
彼女自身が最後に救われていたのか、それとも救われなかったのか。
その答えを、私自身まだ出すことはできない。
それでも、できることなら最後は幸せだったのだと思いたい。

……もちろん、本音を言えば、生きて玲人や色羽と共に歩んでほしかった。
だが、もしそうなっていたなら、このシリーズはここまで心に残る作品にはならなかったのかもしれない。
だからこそ、この結末だったのだろうとも思う。

まとめ

作品自体は、ずっと知っていたシリーズではあるもののずっと敬遠していた作品だが終わってみれば1か月程度で3作品やり終えたのでそれくらい面白い作品だった。

正直、ゲームのシステム面については色々とおもうことはあるものの、作品としてみると良作と言える部類だとおもう。

勿論、猟奇性であったり様々な要因から合う合わないがある作品だと分かっているが私は好きな作品だった。

必ずしもTrueEndが幸せではないのも、イノグレらしいというのがなんとなく分かった三作品だった。

音楽も絵もとても素晴らしく、全体的に高水準な作品だったなとおもう。

次にやるゲームはまだ決まっていないが、少しはこの作品の余韻に浸りたいなとおもう。

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